現役運転士による電車の知識と職場裏事情

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福知山線脱線事故から18年 当時小学生だった私が思うこと

time 2023/04/25

福知山線脱線事故から18年 当時小学生だった私が思うこと

18年前の4月25日、兵庫県の福知山線で脱線事故がありました。

死者は、107名で怪我をされた方も多数おられました。

直接的な脱線の原因は、運転士による速度超過が原因でした。

その他、日勤教育や当時のJR西日本には中堅社員が少ないことが原因で教育者が少なかったなどの声もありました。

とりあえず、まず当時思ったことを書いていこうかなと思います。

当時私は小学生低学年でしたが、当時の事故はテレビの生中継で見てた記憶があります。当時は物心ついたかどうかの時期ですのではっきり覚えてることは少ないですが、「電車がペチャンコ」という事だけわかりました。それ以上のことは当時よく分かりませんでした。

その後特に、鉄道にすごい興味があったという訳でもなかったのですが、縁があって今鉄道会社で働いて運転士をやっているのですが、仕事で電車を運転するようになるとまた違った考え方をできるようになりました。

というのも、まず電車を運転したことがない人が、鉄道会社で働いたことない人が、あの事故の運転士が起こしたこと、日勤教育について受ける側の気持ちや行う側の気持ちをどこまでわかるかな?と

まず、当時のJR西日本について

関西のエリアは、私鉄との競合もあって、当時非常にダイヤが厳しいものとなっており、時間にも余裕がなかったそうです。国土交通省の事故報告書にはなかったですが、旅客の意見や要望や過剰な苦情を恐れた結果、安全を軽視していた部分はあったかと思います。

当時は、ミスやその報告を偽った乗務員に対してペナルティとも取れる指導、所謂「日勤教育」を行っていました。内容の受け止め方は、報告書を見る限りの感想では人によって違う風に見えました。

まず、日勤教育についてですが、

現在でも、乗務中に責任事故やその報告を偽ったり、隠そうとしてそれが発覚した場合はどの会社でも、一旦乗務をさせない場合が多いかと思います。

どのくらいの方が、この乗務を降ろすことに関して「悪」と見るか、「日勤」という勤務にさせることを「悪」と見るかわかりませんが、運転の失敗や偽った報告をした。すなわちそれはお客様の命に関わるようなミスだと私は思います。人間だからミスをするのは当然とも言えますが、だからといって「じゃあ次から気をつけてね〜」だけ言って元通りに仕事をさせるのが正しいという訳ではなく、やはり何故起こしてしまったのか?何故偽らないといけなかったのかという部分を見つけなければならないと思います。

でないと、同じことを繰り返します。

問題なのは日勤教育そのものではなく、日勤教育の中身だと思います。

国土交通省の報告書には数名の日勤教育を受けた乗務員のコメントがありました。

京橋電車区運転士Hの口述 

日勤教育に関して、京橋電車区運転士Hは、次のように口述している。
人身事故のときの報告が不適切であったため、1ヶ月以上乗務から外された。
その際の事情聴取では、無線交信の録音を確認しただけで、大きな声やきつい言葉は無かった。
1週間ぐらいは反省文やレポートを書いて、そのあとは病気で乗務できない
人と一緒にダイヤ改正の資料作成の手伝いをした。
日勤教育におけるレポート作成では、自分の行動を振り返り、異常時にはこういう心理状態になるんだなとか、人身事故に遭遇したら慌ててはいけないということが分かり、自分のためになったと思う。
京橋電車区運転士Iの口述。

日勤教育については、他の乗務員から見える場所で行われ、見せしめのようなことが多く、トイレに行くために席を離れるにも上司の許可が必要であるなど、非常にストレスを感じた。
自分は折り返し駅で列車に乗客を乗せた状態で、それを看視しなければならないときに、私用で列車から離れていたところを見つかり、1ヶ月間乗務から降ろされた。
最初は、事情聴取で、何回も怒られた。
その後、何日間にもわたって午前約1時間半、午後約3時間、京橋駅の上りプラットホームで、着発する列車の運転士全員に「ごくろうさまです。気を付けて下さい」というようなことを言わされた。
日勤教育は他の運転士から見える位置で受けるので、他の乗務員からの視線を一番ストレスに感じる。
日勤教育に関する京橋電車区運転士Jの口述 

日勤教育に関して、京橋電車区運転士Jは、次のように口述している。
平成17年4月、入換信号機の停止信号を冒進した事象が責任事故とされ、
6日間の日勤教育を受けた。
京橋電車区に戻ったところ、最初「何しとんねん」と言われ、続いて20~30分間であったか立て続けに、「乗務不適格」、「もう乗れんかも分からん」などと上司に言われた。
もしそのまま運転士を続けても、それからの乗務は上の方から目をつけられてきつくなり、物凄くしんどいのではないかと思い、また年齢的なこともあって、自分としても運転士を辞めることを希望し、平成17年4月20日他の電
車区の車両管理係に異動となった。
また、この信号冒進の前(平成11年11月)にも約190mの所定停止位置行き過ぎを起こしたことがある。
これらの責任事故等を起こしたときには、まず日勤教育のことが頭に浮かんだ。さらに、上述の責任事故のときではないが、京橋電車区の管理者に少しでもよく見られるよう、言い訳を考えながら運転したことがある。運転士が責任
事故等を起こすと管理者もその上から怒られるので、管理者が自分かわいさに厳しく運転士を監視するのが嫌であった。
なお、所定停止位置行き過ぎを起こしたときに行き過ぎた距離を少なく報告するよう車掌に頼んだことや、逆に、出発時刻前に車掌が旅客用乗降口を閉扉したようなときに報告しないよう車掌に頼まれたことがある。
また、本件運転士とは挨拶を交わす程度の関係で、親しい関係にあったということはない。

この内容を見てみなさんはどう思われたでしょうか?

まず、日勤教育と言うのは、自らぜひ受けてみたい!というもので良いわけは無いです。日勤教育を受けないようにミスをしないと言うのも間違いではありますが、日頃からミスをせずに受けないようにするというのは普通のことだと思います。

この乗務員のH以外の方は、非常にストレスを感じたとありました。私も教育として挨拶をさせることやトイレに行く時に許可が必要など、なんの意味があるかわかりません。

当時はパワハラという言葉はなかったのでしょうか…若い運転士にとっては、相当追い詰められるような環境だったのかもしれません。

ただ、最後の乗務員Jは、信号を冒進したり、オーバーランもやって、少しでもよく見られたがために嘘を考えたり、他者も失敗しているのに…という思考に至るのはどうなんだろう?と思いました。

なので、日勤教育自体に細かい決まりや行うことが決まっておらず、その時の上司や、ミスをした乗務員によって感じ方はかなり違うと思いました。

なので、運転士一人一人だけのことで考えると、日勤教育を受けたくないという理由が、かなりバラバラで、単純に日勤教育が厳しすぎるから…とか、自分はミスが多いから次ミスをしたら…ということに囚われていたり…運転士も人間なので人によってはまず嘘から入る人や、反省して正直に受ける人など様々だったのではないかと思います。

では、運転士がミスをしたらどうするべきか、日勤教育は正しいのかですが、運転士を乗務から降ろすのは私個人的な意見で言うと、そうするしかないのではと思います。当時のJR西日本流の日勤教育が間違いだったとしても、ミスをしたまま運転するのはお客様の命を預かっている仕事として正しいとは思えません。

反省してるかと問われたら明らかに自分のミスでは無いとわかっていない限り誰だって反省していると言います。問題は、反省しているかではなくて、上記にもあるように何が問題だったかをどこまで把握しているかや、どうすれば改善するか、話し合って理解することは大事なことだと思っています。

そして日勤教育の内容がいくら仮に正しかったとしても人によっては、それはプレッシャーになるのは、人としてどうしてもある事です。でもそのくらい危機意識を持たないといけない仕事でもあります。

日勤教育に関して賃金がという声もあります。しかし、報告書にもあった通り、賃金が減るのは、乗務をしていた手当が減るからであって、基本給など与えられないといけない賃金が減るという訳では無かったようです。なのでそこを責めるのは違うのかなと思いました。まあ報告書を見る範囲でですけど…

決して当時のJRの教育を擁護する訳では無いです。教育の中身が大事ということです。

次に運転士に関することです。

この運転士は23歳でまだ免許を取ってから1年も経っていなかったそうです。かなり若くして免許を取得した方なのかなと思います。

ニュースなどで過去に数検オーバーランなどの事故を起こしていたとみたので報告書を見ました。

平成16年6月片町線放出駅における所定停止位置行き過ぎ
平成16年6月片町線下狛駅における所定停止位置行き過ぎ
平成16年7月東海道線灘駅における所定停止位置行き過ぎ
平成15年8月阪和線鳳駅~和泉府中駅における車掌乗務中の居眠り

この数に関して、私はかなり多いと見ていたのですが、指導担当のコメントを見て少し驚きました。

本件運転士の本事故以前における所定停止位置行き過ぎ等の状況は、以下に記述 
するとおりであるが、これに関して、運輸部乗務員指導担当マネージャーは、「運転
士になって1年も経っていない本件運転士は、まだ熟練しておらず、また運転士に
よっては報告しないこともある。報告した所定停止位置行き過ぎ等がそんなに多い
ということはないと思う」と口述している。

ということは、若い運転士の中では、まだ多く行き過ぎ等ある人がいたのか?ということはあの日勤教育をもっと受けている人もいたのだろうか?と思いました。

私の中では相当な方だと思っていましたが、大きな会社だとかなりの頻度なのか、それとも当時特別多かったのでしょうか。

今更ですが、脱線事故の事故の状況です。

脱線前に、非常停止や、オーバーランがあったようです。

特に気になったのは尼崎駅での車掌とのやり取り

伊丹駅では、乗降口の扉を開け、旅客の乗降後、できるだけ早く扉を閉めた。伊丹駅を出発したときは、1分半かせいぜい2分位の遅れであった。 
伊丹駅を発車し、「次は尼崎」と次駅放送をしたところ、間髪を入れずに本件運転士から車内連絡合図「電話機にかかれ」があった。そのため、「次は尼崎」に続けて「尼崎から先は東西線に入ります快速同志社前行きです」という行先案内放送又は乗換案内放送をしようとしていたが、それを止めて車内電話に出ると、本件運転士から具体的な言葉は忘れたが「まけてくれへんか」というような話があったので、少し考えてから「だいぶと行ってるよ」と答えた。
「まけてくれへんか」というのは、行き過ぎた距離を小さく報告して欲しいという意味だと思った。
本件運転士と車内電話で話しているときに、乗客の男性が客室と運転室との間を仕切るガラスを「コンコン」と叩いたので、本件運転士に「だいぶと行ってるよ」と言ったところで車内電話の受話器を戻し、客室と運転室との間の扉を開けた。このとき、本件運転士は、7両目の様子が分からないので、「電話を切られた。車掌が怒っている」と思ったかもしれない。

このやり取りの後、脱線事故が発生しており、それまでの運転も報告書を見る限りかなりぐちゃぐちゃになっています。今思えば、遅延も日勤教育の対象になるかもという焦りだったかもしれませんし、遅延事態対象にならなくてもいい目で上司に見られたいことや、車掌を怒らせたくなかったのかもと色々想像できますが、結果を見ると最悪です。

Twitterでは、問題児に運転させたのが問題と過激なツイートしましたが、もしこのような思考に状況ですなる運転士を育成していたのならJR西日本は、言ってしまえば「ヤバい会社」ですし、この運転士が日頃から他の運転士と違っていたとなれば、その運転士に電車を運転させていたとしてもかなり会社に問題があります。

私の感覚でツイートをしていましたが、その感覚で言わせてもらうと、この運転士になんで運転させてたんだろう…と考えてました。そういう運転士が多かったのか…わかりませんが、それこそが安全意識が低いと言われていた原因の一つかもしれん。

自分の運転している環境と違うので一概には言えませんが、それでも速度超過やオーバーランをしていい理由にはなりません。

ただ、皮肉にもこの事故のおかげで地方の会社にまで安全装置が付くことになったりしたことも事実です。

同じ運転士として、この運転士を若いから、経験不足だったから、環境が悪かったからと可哀想とは思いません。会社も悪いし、運転士もたくさんの犠牲者を出したことは、事実です。だから運転士が悪いじゃなくて運転士も悪いというのが正しいでしょうか。

ムリなダイヤは、もう無くなったのかもしれませんし、今の安全装置などがあればとありますが、結局はこの事故のおかげで設置されたものや改善されたものも多いでしょう。

ただ変わっていないとすれば、18年経った今も事故や人身などで発生した際の旅客からのクレームですかね。結局、JRも旅客の意見を一番に取り入れた結果こうなったとも言えるのかもしれません。

まあ装置や車両の性能がーまでは触れずにここまで書いたので感情論になるところもあったでしょうけど、一番の被害者は、被害にあったお客さんです。

この日を改めて見つめ直して事故防止に務めていかなければと思いました。

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densei

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