現役運転士による電車の知識と職場裏事情

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「惰性(だせい)」とは?電車を省エネで運転させるために大事な事

time 2022/04/23

「惰性(だせい)」とは?電車を省エネで運転させるために大事な事

自動車では、燃費をよく運転するために急加速させないようにしたりと運転を工夫したりするかと思います。

電車も同じく、力行(自動車でいうアクセルを踏むこと)をするとその分電気を多く必要とします。

惰性という言葉はおそらく鉄道用語とかではないと思うので誰もが聞いたことはあると思います。

電車を運転する際、自動車は下り坂でなければ基本的にアクセルを踏みっぱなしだと思うのですが、電車はある一定の速度に達したらノッチ(自動車でいうアクセル)をオフにします。もちろん上り勾配の場合は、細かい頻度でノッチを入れ直しますが勾配のない箇所では、速度がそこそこ落ちるまではノッチを入れ直しません。



これを惰性運転と言いますが、先述の通り電気を多く使わない省エネ運転の為という理由と、乗り心地をよくするための工夫のひとつとして惰性運転を行います。

そして当然ですが惰性だと勾配のない箇所でも速度はどんどん下がっていきますが、これは前に進もうとするエネルギーに対して抵抗しようと働くためで、それを「列車抵抗」といいます。

そしてその抵抗は「出発抵抗」「走行抵抗」「勾配抵抗」「曲線抵抗」と主に4つあります。

どれも、自動車でも発生するものなのですが電車でも同じように抵抗の影響を受けます。

そしてこの抵抗を受ける原因は様々ですが、強風などの気象状況、線路状態、車輪の摩耗などが大きな原因かなと思います。

その中でも車輪の摩耗状態は私が運転している中で一番抵抗を感じやすかったです。

摩耗状態と言うのは所謂、フラットの影響のことで、走行中に非常ブレーキを執った場合などにフラットができやすいのですが、車輪が動いていない状態で線路を滑るように止まるためにできてしまう状態のことで、丸い車輪の一部が削れてしまいます。

フラットが酷いと走行中も車輪からトントンと音と衝動が発生しますし、完全に車輪が円形ではいのでその分、車輪の転がりが悪くなり抵抗も発生します。

そうなると惰性運転をしていてもすぐに速度が落ちてしまい、すぐに再ノッチを入れないと行けなくなります。

結果、省エネ運転のために惰性で走っても再ノッチを何度も繰り返すこととなって省エネとはいえなくなってしまいます。

ですので、本当の省エネ運転をするためには、停止時に強いブレーキを使わないようにしたり、発車時もブレーキを排気しきるまでノッチを入れないなど、気を使った運転をしないといけません。



もちろん、乗り心地を無視したりすればわざわざこういう運転をしなくても電車は運転できるのですが、お客さんを乗せていますし、何より「プロ」の運転をしないといけないと考えると気を使った運転はとても大事なことだと思います。

運転士見習いにとっても惰性運転は簡単そうで意外と難しく、速度が怖く出せるとこまで速度を出せなかった結果、再ノッチを入れ直すということが多々あるみたいです。

駅間の距離にもよりますが、理想はやはり出せる区間速度まで一気にあげて、再ノッチ無しで次駅に入る感じでしょうか。

お客さんにとっては、ブレーキ操作の次に運転士の運転操作の上手い下手に気づきやすいと思います。



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densei

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